見た目や印象だけで人を切り捨てる社会のクセ
「撮り鉄」のマナーの悪さが度々SNSで取り上げられるのですが、そのようなニュースやポストを見た時に「ちょっとそれおかしいな…」と思う過剰な発言もよく目にします。
そのような事例を見かけた時、どのような認知バイアスがかかりやすいかをまとめてみました。
例:
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撮り鉄はマナーが悪い
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カメラを持っている人はおかしい人が多い
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カメラを下げている人は盗撮目的
など…
用語説明:
ヒューリスティック:限られた情報や短い時間で判断をするために、脳が無意識に使う近道(いわゆる「システム1」)。省エネで素早く決められる反面、誤りや偏り(バイアス)を生みやすい。
認知バイアス:ヒューリスティック(思考の近道)や感情、記憶のクセなどが組み合わさって生じる、体系的で再現性のある思考のズレのこと。個人や集団が同じ方向に判断を歪めやすく、過度の一般化や誤った原因帰属、確証的な情報収集などを引き起こす。ヒューリスティックは短時間で役立つ反面、繰り返されるとバイアスとして固定化されやすい。
バイアスの問題点は、短時間で結論を出す便利さの裏で、誤った判断や固定観念を生み、それが個人や集団への不当な扱いや重大な意思決定ミス、社会的な誤解の定着につながりやすいので、普段から意識して考える必要があります。
撮影者へ:
ほとんどの撮影者はマナーに気をつけ守っていると思いますが、こういったマナー違反が続くと世間の風当たりも強くなり、撮影そのものの継続性が危ぶまれてしまいます。
かと言って強すぎる注意喚起も反発心が生まれやすくなり、自省をするのではなくバレない行動をとるなど、自発的な問題の収束に結びつかないかもしれません。そもそもマナーを知らない可能性もあります。
自分たちにできることは(マナーを知っている)先輩として後ろ姿を見せ、優しく導くことと思うのですが、どうでしょう。
バイアス名 |
意味 |
具体例 |
対処法 |
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顕著性バイアス(Salience bias) |
目立つ情報を過大評価してしまう傾向。 |
「首からカメラ」の目立つイメージだけで印象を決めている。 |
目立たない事例(例:スマホ撮影)や母数を確認する。 |
可用性ヒューリスティック(Availability heuristic) |
思い出しやすい事例に基づいて判断しやすいこと。 |
印象に残る過去の迷惑行為を根拠に全体を判断している。 |
データや複数事例を参照し、比較検討する。 |
早計な一般化(Hasty generalization) |
少数の事例から全体を断定してしまう誤り。 |
一部の迷惑行為=すべてのカメラ保持者と結論付ける。 |
サンプルを広げて反例も探す習慣をつける。 |
代表性ヒューリスティック(Representativeness) |
ある特徴が集団の典型と誤認する傾向。 |
「撮り鉄=マナー悪い」と図式化する。 |
個別の事情を確認し、類似性=原因ではないことを意識する。 |
基本的帰属の誤り(Fundamental attribution error) |
行動を性格に結び付け、状況要因を見落とす傾向。 |
「カメラを持っている=性格や本質が悪い」と決めつける。 |
状況(撮影目的・場所・時間)を想像してみる習慣を持つ。 |
確証バイアス(Confirmation bias) |
自分の信念を支持する情報ばかり集める傾向。 |
カメラマンの悪い例ばかり記憶・引用して正当化する。 |
意図的に反証を探し、逆の証拠にも目を向ける。 |
ベースレート無視(Base-rate neglect) |
全体に対する事象の頻度(母数)を無視する誤り。 |
盗撮はスマホが多いのに「カメラ=問題」と扱う。 |
率や頻度(何件中いくつか)を確認する癖をつける。 |
ステレオタイプ化(Stereotyping) |
集団についての固定観念で個人を評価すること。 |
「撮り鉄含め〜」でカテゴリ全体を一括りにしている。 |
個人レベルで観察し、カテゴリと個人を切り離す。 |