ソニーセミコン、2億画素のスマホ向けイメージセンサーを開発:AI技術内蔵で4倍ズームも高精細 - EE Times Japan
https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2512/02/news056.html
プレスリリース
有効約2億画素、AI技術を内蔵したモバイル用イメージセンサーを商品化 ~単眼カメラで高倍率のズーム時にも高精細・高画質を維持~|ソニーセミコンダクタソリューションズグループ
https://www.sony-semicon.com/ja/info/2025/2025112701.html
興味深いイメージセンサーが発表されたので感想。
センサーの特徴は…
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1/1.12型(対角14.287mm)の大型サイズ
→ 現行スマホではかなり大きい部類で、低照度に強い。 -
2億画素の超高画素(画素ピッチ:0.7 µm × 0.7 µm)
→ 画素分割やクロップズームに有利。 -
カラーフィルター配列:Quad-Quad Bayer Coding(QQBC)
→ 必要に応じて隣接16画素(4×4)を1画素として扱う仕組み。
Appleのピクセルビニングと同様に、高感度時には画素をまとめてノイズを低減し、高解像が必要なときは元の配列に基づいて再モザイク処理を行う。
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AI学習型リモザイク機能をセンサー内蔵
→ ズーム撮影時に高精細な画質を保つリモザイク処理を実現。4倍ズームでも高精細を維持しやすい設計。 -
HDR・高ダイナミックレンジ対応:「DCG-HDR」「Fine 12-bit ADC」「HF-HDR」
→広い階調と高ダイナミックレンジを実現。
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フレームレートと撮影モードの多様性
→ 2億画素で最大 10 fps(全画素AF時) 。5000万画素で 30 fps、1250万画素で 60 fps など、用途に応じたモード切替が可能。
現行iPhoneのセンサー(4800万画素ピクセルビニング)を更に大型化+高画素化した感じ。
ネックとしては1/1.12型(対角14mm)とスマホとしては巨大サイズで、本来はコンデジに合ったサイズ。
ならば、スマホではなくコンデジに積んで欲しい…と思いもしますが、それが難しい理由も…ひとつはニーズ。そして、スマホならではの演算力となります。
スマホの強みは“計算力”
今のスマホは、撮影時に何枚もフレームを同時に記録して、それらをAIが一気にまとめて最適化する仕組みが当たり前になっている。ISPに加えてNPUやGPUがフル稼働し、露光違いを統合しながら、超解像、ノイズ除去、局所HDR…そういう処理を瞬間的にやってしまう。
コンデジは電力も処理能力もそこまで使えないため、基本的には「1枚のRAWを丁寧に仕上げる」従来のカメラスタイルのまま。夜景やズームで差が出るのは、この構造の違いが大きい。
合成の前提が違う
スマホは10〜20枚のフレームを重ねて“1枚をつくる”という発想で動いている。足りない情報はAIが補い、階調もノイズも最適化していく。
一方でコンデジはフレーム数が少なく、AI処理も弱いので、暗所の細部や高倍率ズームではどうしても限界が出やすい。
ズーム画質にも差が出る
スマホはAI前提の“情報の補完”が得意だ。高画素+超解像で、光学ズームに頼らなくても細部を再構築できる。
コンデジの場合、光学ズームが主役になるため、AIで“失われたものを復元する”というスマホの強みには勝ちにくい。
更新速度の違い
スマホは毎年プロセッサが更新されるけれど、コンデジは同じ処理エンジンを数年使い続けることが多い。スマホは大量生産で最新プロセッサを安く組み込める一方、台数の少ないコンデジはどうしても更新のコストが重くなる、という構造的な事情がある。
まとめ
1/1.12型のセンサー自体はコンデジ向きのサイズでも、いま画質を決めているのはセンサーより“計算力”の方が大きい。
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RAW現像前提ならコンデジはまだ強い。
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けれど、JPEG撮って出しやズーム画質ではスマホが優位になりやすい。
コンデジが存在感を取り戻すには、大型センサーよりも、画像処理とAI推論の強化が必要になってくるのかもしれない。